記憶の中の写真 45

ティワナの店番 (2005/11/1)

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ティワナはカリフォルニア州サンディエゴから南に車で30分ほどの米国との国境に面したメキシコの観光と工業の街である。

私が初めてこの街を訪れたのは1981年だった。

その頃のティワナは米国を中心に世界中からの観光客で溢れ、メキシコ人特有の明るさ、観光客の賑わいに加え、バハ・カリフォルニアの晴れ渡った天候がこの街特有の華やかさを作り出していた。

土産物店の前で聞こえて来る「タナカサン、サトウサン」、「トモダチ」、「タカクナイヨ」、「ミルダケタダ」といった店員の日本語の呼び込み。

 

銀製品やトルコ石の装飾品が入った籠を手に、客の間をぬって売り歩く女性や子供達。


街のあちこちから流れてくるマリアッチと呼ばれるメキシコ楽団による演奏。

 

レストランのオープンスペースでサルサソースをつけたトルティーヤをつまみに飲むマルガリータ


そして晴れ渡る雲一つないバハ・カリフォルニアの青い空。

喧騒の中に、心躍るメキシコがあった。

2005年、僕は四半世紀ぶりにティワナを訪れた。

四半世紀ぶりのティワナからはかつての華やかさと賑わいに陰りが見えていた。

経済の停滞とともに麻薬組織による犯罪などで治安が悪化し、観光客離れが進んだことが原因の様だった。

現地で安全のためにガイドから指定されたのは、本当に限られた範囲だけでの自由な行動だった。

案の定、街を歩くとかつて華やかだったエボリューションストリートにかつて程の賑わいはなく、観光客がまばらな土産物売り店の店番も客待ちの時間を持て余しているようだった。

半日ほどの滞在の後、ティワナを離れ国境に向かう車の中では、まだ気持ちのどこかで明るく活気に満ちたメキシコを探していた。